
「画面上では完璧なレイアウトだったのに、いざ印刷・製本された冊子を開いてみたら、文字が綴じ目ギリギリで読みにくい…」「見開きで配置した写真の中心が隠れてしまった…」
デザイナーの皆様であれば、一度はこのようなヒヤッとする経験があるのではないでしょうか。
冊子デザインにおいて、仕上がりを大きく左右するのが「ノドの余白」です。本記事では、特に注意が必要な「無線綴じ」を中心に、中綴じや平綴じといった製本方法別のノドの適切な余白設定について解説します。
そもそも「ノド」とは?

冊子デザインにおける「ノド」とは、本を綴じている側の部分、つまりページを開いたときの中央の綴じ目周辺の余白を指します。
反対に、本を開いた際の外側(ページをめくる側)の余白を「小口(こぐち)」、上部を「天(てん)」、下部を「地(ち)」と呼びます。
一枚のペラもの(チラシやポスターなど)のデザインとは異なり、複数の紙を束ねて綴じる冊子では、この「ノド」の存在を常に意識してレイアウトを組む必要があります。
なぜノドの余白設定が重要なのか?
ノドの余白を十分に取らないと、以下のような問題が発生します。
・文字が隠れて読めない:綴じ込み部分にテキストが入り込み、読者が本を無理やり見開かないと読めなくなります。
・デザインの意図が伝わらない:写真やイラストの重要な部分(人物の顔など)が中央に隠れてしまいます。
・本が破損しやすくなる:読みにくさから読者が本を強く押し開こうとするため、背割れ(綴じている背の部分が割れること)やページ抜けの原因になります。
読者にとってストレスのない、美しく機能的な冊子を作るためには、製本方法に合わせた適切なノドの余白設定が不可欠です。
【製本方法別】失敗しないノドの余白の目安
冊子の綴じ方によって、本を開いたときの「開き具合」は大きく異なります。ここでは代表的な3つの製本方法について、必要なノドの余白の目安を解説します。
1. 無線綴じ(推奨余白:15mm〜25mm以上)

【特徴】
丁合(ページ順に重ねること)した本文の背に糊を塗り、表紙でくるむ製本方法です。ページ数の多いカタログ、記念誌、文庫本などで広く使われます。
【ノド設定の注意点】
無線綴じはページが180度完全に開かないという最大の特徴があります。そのため、ノド元には「隠れる部分」が発生します。
・基本的な目安:最低でも15mm〜20mmのノド余白を確保しましょう。
・ページ数が多い場合:ページ数が100ページ、200ページと増えるほど、ノドの奥深くに隠れる面積が大きくなります。厚みのある冊子の場合は、20mm〜25mm以上の余白を取ると安心です。
・用紙の厚さ・硬さ:厚い紙や硬い紙(コシのある紙)を使用する場合も、本が開きにくくなるため、余白を多めに取る必要があります。
2. 中綴じ(推奨余白:10mm〜15mm程度)

【特徴】
開いた状態の紙を重ね、中央の折り目をホッチキス(針)で留める製本方法です。ページ数の少ないパンフレットや会社案内、雑誌などでよく使われます。
【ノド設定の注意点】
中綴じは根元まで180度しっかりと開くため、無線綴じほどノドの余白に神経質になる必要はありません。
・基本的な目安:一般的なマージンである10mm〜15mm程度確保されていれば、文字が読めなくなる心配はほぼありません。
・注意すべきは「小口の押し出し」:中綴じはノドよりも小口(外側)に注意が必要です。ページ数が増えたり厚い紙を使ったりすると、内側のページになるほど外側に押し出され、小口側がカットされてしまいます。ノドだけでなく、小口側の余白も十分に取るよう意識しましょう。
3. 平綴じ(推奨余白:20mm〜25mm以上)

【特徴】
紙を重ねて、ノドから約5mm程度入ったところをホッチキス(または糸)で上から貫通させて留める製本方法です。企画書や報告書、テキストなどで使われます。
【ノド設定の注意点】
平綴じは綴じ位置が紙の端から離れているため、ノド元がまったく開きません。
・基本的な目安:綴じ代(約5mm)+隠れて見えなくなる部分+本来必要な余白を合計し、最低でも20mm〜25mm以上は必要です。ノドの余白が最も必要な製本方法と言えます。
デザイナー必見!ノド周りのレイアウトのコツ
余白の数値を設定するだけでなく、実際のレイアウト作業においても以下のポイントを押さえておきましょう。
①重要なテキストは安全圏へ
ページ番号(ノンブル)や注釈なども含め、絶対に読ませたいテキストはノドから15mm以上離した安全なエリアに配置しましょう。
②見開き画像の配置に注意
無線綴じで左右のページにまたがる写真やイラスト(見開き)を配置する場合、中心部分が数ミリ隠れてしまいます。人物の顔や商品の重要なディテールがノドの境目(見開きの中心)にこないよう、配置を左右にずらすなどの工夫が必要です。
確実な仕上がりのために。「束見本」を活用しよう
ここまで一般的な余白の目安をお伝えしてきましたが、「実際にどれくらい開くのか」「何ミリ隠れるのか」は、使用する用紙の種類と総ページ数によってまったく異なります。
そこでおすすめしたいのが、デザインを本格的に進める前に「束見本(つかみほん)」を作成することです。
参考記事:形状見本・束見本のご紹介
束見本とは、実際の印刷物と同じ種類の紙、同じページ数、同じ製本方法で作る「白紙のサンプル本」のことです。束見本を手に取って実際にページを開いてみることで、以下のような確認ができます。
・本の開きやすさ、紙のコシの強さ
・ノド元が実際に何ミリ程度隠れるか
・全体の厚み(背幅)の正確な寸法
束見本に定規を当ててノドの隠れ具合を実測すれば、「この紙とページ数なら、ノドは18mm取れば十分に読める」といった確実な数値を割り出すことができます。トラブルを未然に防ぎ、自信を持ってレイアウト作業を進めるための強力な味方です。
まとめ:適切なノドの余白設定で、読者に優しい冊子デザインを
冊子デザインにおけるノドの余白は、単なるデザイン上のルールではなく、「読者がいかに快適に読めるか」という体験に直結する重要な要素です。
・無線綴じ:180度開かないため、15〜25mm以上の広めの余白が必要。
・中綴じ:根元まで開くが、10〜15mm程度の基本マージンは確保する。
・平綴じ:綴じ代があるため、20〜25mm以上の十分な余白が必要。
用紙選びやページ数によって迷った際は、ぜひ事前に束見本を作成し、実物で確認する癖をつけましょう。
新晃社では、デザイナーの皆様のこだわりを形にする高品質な印刷・製本をサポートしています。
「この仕様でノドの余白はどれくらい必要か?」「実際の用紙で束見本を作って確認したい」といったご相談も大歓迎です。冊子印刷でお悩みの際は、ぜひお気軽に新晃社までお問い合わせください。





